ふと窓の外に眼をやると 玄関のまえにぽちんと 小さな毛球
扉を開けて手にのせてやると 空では雷が鳴った
小さなしっぽはジグザグに折れた雷尻尾
何処からどうやって辿りついたのだろう
片方の手の平におさまるほどの大きさで350g
買ってきた仔猫用ミルクを飲む間もなく膝でこんこんと眠ってしまった
よほど草臥れてしまったんだろうな
翌日に獣医さんへ連れて行き 眼は傷がひどくて両方とも見えていないけれど
先生の手の平に出されたフードを一生懸命鼻で探す様子に
この子はだいじょうぶ 大きくなれますよと言われた
家を出て二十八年 猫と暮らせることはもうないと思っていた
でも 小さなかたまりに触れたとき
あぁ この仔と暮らすことになるんだなって思った
このオウチならって やってきたんだよね
慈雨 ジグザグジウ
この仔の一生に雨降るような時があってもそれは温かな雨であるように
そう願って名前をつけた