{NOCH ETWAS}

Written by yun

「&」の冊子の入稿を終えて 一時的に保存していた写真データの整理整頓作業をしているうちに ことんと気持ちが下降していくのを感じて 何故なんだろうかと.構成を考えはじめた当初は最後の頁に奥付といっしょにして短い説明文をつけるつもりでいたけれど(それが定形だと思い込んでもいて)コラージュの構成のための写真を見ているうちに なにかしら 新しい要素になってくれるようなうれしいような予感のするスナップができた.今回の冊子の構成には しっくりとはこないけれど使いたいと思い 真ん中の見開き頁に{物質のまなざし}についてのテキストをいれることにして そこに使うことにした 真ん中で一息つくような案配なら 違う印象の写真でもいいのじゃないかって.そうして そのテキストは[自分にできる次の術のことを夢想する]としめくくったのだ.次の術を考えていかなければと でも できるのだろうかという不安な気分が下降の原因かな.冊子のために使えればとあまり考えもせずに モノを単体でも撮影した.結局使わなかったけれど整理をするためにデータを現像しながら それらの写真を眺めるうちに[noch etwas]とぽかんと浮かんだ.テキストを確かめる時に音読する?と聞かれたことがある.するよ 音読は好きだからって答えた.横書きを縦書きにして読み返したりもするよとも.[noch etwas]と声に出す.小文字よりも大文字がいいと感じる.意図せずに撮ったものの姿と物質名を並べる.それだけのこと.今の私にはしっくりくる.そうだ こんな風にモノをひとつで単体で撮ってみたいとずっと頭の中にはあったのだ.

実際のもののサイズよりも大きくしてアウトプットしてみたいとも.ただそうする意義を自分にうまく説明できずにいて 具体的なことは進まなかった.家のあちこちに そうやって撮りたいと思っているもの達が放り出してあって いつの間にか埃を纏うようになり  埃自体はとても好ましいマテリアルだけれど 無為な時間がつもっていくだけのようにも思える.夢想を具現化するためにその埃を取り去ってみることだ.埃を撫でながら取り去って 今のこの時間に戻してみる.ちょっとやってみよう.{NOCH ETWAS}は モノを単体で 平置き的な位置で画角のまま 眼に素直でいられる縦構図 モノクロ  物質名をすべて大文字でいれる そして像がうっすらと二重になってわずかにずれる 単体で写すそのベースの質感は ゼロなようでいてニュアンスもあるような  透明でないアクリルが案外としっくりくるような気がする.使ってみたくて気になっているインスタントカメラの小さな判型の印画紙に刷るのもいいかも.それをフレームのなかにmaterial glanceのように配列したらどうだろうか.ただのモノとして並ぶのか もっとなにか他の要素 様相 になって並ぶのか.

{NOCH ETWAS}